EXCELみたいなシステム、昔から有りました

関数型言語を使用して学校会計の予算編成システムを開発した話

これは1974年の話です。当時筆者は、新入社員として経営コンサルタントチームに所属していました。

多変量解析 数量化I類を使った統計分析システムの開発の後に、先輩の経営コンサルタントに付いて、学校会計の予算編成システムの開発に従事していました。

学校会計は企業会計とは少し異なっていて、企業会計での資本金は基本金と呼ばれています。

システムの概要は、過去のBS(貸借対照表)、PL(損益計算書)を基にして伸び率を入力する事によって将来のBS、PLを作成するというものです。

プロジェクトは4ヶ月間で業務分析を先輩の経営コンサルタントと筆者、要件定義からシステム設計、実装、客先納品、客先稼働支援を筆者1人で実行するというものです。

PLだけでしたら単純に伸び率を掛ければ良いのですが、BSまで含めるとそれほど単純では有りませんでした。

会計システムを作成したことが有る方なら良く知っていることですが、複式簿記の考え方ではBSとPLの項目は密接に関連しています。

複式簿記では、1つの取引が資産・負債・資本、費用又は収益のいずれかに属する勘定科目を用いて借方(左側)と貸方(右側)に同じ金額を記入する仕訳と呼ばれる手法で表されます。

それをBSでは資産・負債・資本で纏め、PLでは費用・収益で纏めています。つまり1つの取引を資産・負債・資本の観点と費用・収益の観点の2面で捉えています。

従って、矛盾の無いBS・PLを作成する為に簡単な仕訳のシステムを作りました。

ここで使用したコンピュータシステムは、1台の大型コンピュータをTSS(時分割方式)により多くのユーザがタイプライターのような端末(ただの入出力装置でPCのように計算機能は付いていません)を使って利用するものです。

多変量解析 数量化理論I類を使った統計分析システムの開発で使用したバッチ型とは違い、端末を用意すれば1日中(午前9時から午後6時まで)使用できました。

バッチ型での1日1回の実行と比較すると、開発効率は天と地ほどの差があります。夢のようでした。

プログラミング言語は、現在だとEXCELのような表計算に使用できる関数型言語です。

項目の入力、演算(10%UP等)や合計等を定義して、BS・PLを作成しました。

FORTRANなどで組むよりも手軽に入出力や計算ができるので、当時から関数型言語は、簡単なシミュレーションなどに良く使われていました。

このプロジェクトで一番困った事は、システムの要件定義でお客様にヒアリングしている時に、「先生、この取引の仕訳はこれで良いでしょうか。」と時々聞かれることでした。

そんな時に限って先輩の経営コンサルタントがちょっと席をはずしていました。理系を卒業したばかりの新人ですから知ってるわけ無いですよね。

どうやって切り抜けたか良く覚えてませんが、クレーム無かったので嘘は言ってなかったのでしょう。当時は必死で複式簿記を勉強しました。

おかげで予算編成システムは無事に完成し、お客様には大変喜んでいただきました。

自前のコンピュータを持たずにタイプライターのような端末だけで利用でき、使っただけ支払えば良いシステムは、現在だとSaaSですかね。

予算編成作業などの非定常作業には向いている使い方でした。

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