プロジェクトを成功させるために最も重要なのは人(管理者、メンバー)です。計画を立てるのも実行するのもリスク管理をするのも全て人です。そこでプロジェクトを構成する人々の心理的な観点からプロジェクト管理の考え方を述べます。
管理者には大きく分けて2つのタイプが有ります。1つはやり方を含めて何から何までメンバーに細かく指示するタイプ。もう1つは、メンバーのやる気を高めて自主性にまかせるタイプ。筆者は、自主性にまかせるタイプの管理者によるプロジェクト管理をおすすめします。なぜなら全ての指示が的確にできる人は非常に少ないですし、自主性にまかせる管理者の何倍も仕事をする必要が有り、管理出来るメンバーの数もせいぜい2,3人が限度となってしまうからです。 小規模プロジェクトでは可能でも、中規模以上のプロジェクトに何人もアサインする事は現実的では有りません。これ以降では、自主性に任せるタイプの管理者をアサインする前提で話をすすめます。
経験的に1管理者当たり5人程度までが良い。それ以上の人数を管理すると目が行き届かなくなり、問題に気づくのが遅れたり、メンバーが疎外感を感じてモチベーションが下がり、仕事の効率が落ちていきます。PMからメンバーまで役割別に見ると、プロジェクトの実行は技術項目と管理項目に分けられます。技術が得意な人と管理が得意な人に大きく分類できる。両方得意な人ももちろんいるが、プロジェクト実行上、力を入れる分野を分けた方が良い。効率的に仕事をする為には、何をいつまで実行するかをプロジェクト全員が認識する事が最も重要です。そのためには、タイムリーで頻繁な管理者からの説明とメンバーからの報告が重要です。プロジェクト構成員の総人数で小規模・中規模・大規模に分けた時の構成案を規模別プロジェクト構成例に示す。おおむね10人以内の小規模プロジェクトでは、メンバーが5人までならPMが1人、5人以上ではPL(サブPM)をつける。PMが管理タイプの場合には、PLはできれば技術タイプが良い。PMが技術タイプならばPLは管理タイプが良い。10人を超えて100人以内の中規模プロジェクトでは、PM1人、サブPM1人、メンバーは5人毎にPLを1人つける。PMとサブPMの関係は、小規模プロジェクトと同様に、管理タイプと技術タイプで補完しあうと良い。100人を超える大規模プロジェクトの場合にもメンバー5人毎にTLを5TL毎にPLをつけると良い。またPMとサブPMだけでは管理する事が多すぎて難しいのでPMOチームをアサインすると良い。
規模 |
職種 |
適性 |
必要人数 |
適正世代 |
適用 |
小規模 | (10人以内) | ||||
PM |
管理(技術) | 1人 | 30代(リーダー) | ||
PL(サブPM) | 技術(管理) | 1人(規模5人超) | 20代後半(リーダー手前)または30代(リーダー) | PMが技術系の場合は管理系をアサイン |
|
メンバー | 技術 | 複数 | 20代(若手) | ||
30代(スペシャリスト) | |||||
40代(スペシャリスト) | |||||
中規模 | (10人以上100人以内) | ||||
PM | 管理(技術) | 1人 | 40代(マネージャ) | ||
サブPM | 技術(管理) | 1人 | 50代(ベテラン)または40代(マネージャ) | PMが技術系の場合は管理系をアサイン | |
PL | 技術・管理 | 複数 | 30代(リーダー) | ||
メンバー | 技術 | PL毎に複数 | 20代(若手) | ||
30代(スペシャリスト) | |||||
40代(スペシャリスト) | |||||
大規模 | (100人以上) | ||||
PM | 管理(技術) | 1人 | 40代(マネージャ)または50代(ベテラン) | ||
サブPM | 技術(管理) | 1人 | 50代(ベテラン)または40代(マネージャ) | PMが技術系の場合は管理系をアサイン | |
PMO | 管理 | 複数 | 1つのチーム | 場合によってはスペシャリストをアドバイザーとしてアサイン | |
PL | 管理・技術 | 複数 | 40代(マネージャ)または30代(リーダー) | ||
TL | 技術 | PL毎に複数 | 30代(リーダー) | ||
メンバー | 技術 | TL毎に複数 | 20代(若手) | ||
30代(スペシャリスト) | |||||
40代(スペシャリスト) |
略称 |
職種 |
役割 |
管理範囲 |
適用 |
メンバー | メンバー | 課題の実行、管理者への報告(課題、進捗等) | ||
TL | チームリーダー | メンバーの管理、メンバーへの課題の割り振り、チームの技術課題の解決、方向性の決定、PLへの報告 | メンバー5人まで | メンバーが5人を超えるときはサブTLをつける |
サブTL | TLの補佐 | メンバー5人まで | ||
PL | プロジェクトリーダー | 5TLまで | 5人を超えるときはサブPLをつける | |
サブPL | PLの補佐 | 5TLまで | ||
PM | プロジェクトマネージャ | PLへの課題の割り振り、プロジェクトの方向性の決定、プロジェクトユーザへの説明、プロジェクトオーナへの説明、プロジェクト課題の解決 | 5PLまで | 中規模以上はサブPMをつける |
サブPM | PMの補佐 | 5PLまで | ||
PM補佐 | PMの補佐 | 5PLまで | 全体で5PL以上の時 |
ToDoリストを作成する事によって、なにをいつまでやらなければならないか。また実行に当たっての課題が明らかになります。ToDoリストは各自終業時5分または翌日の始業時5分で作成し提出してもらいます。項目の単位は、成果が出やすいようになるべく細かい単位にすると効果的です。各メンバーがいつまで何をやらなければならないか。またどんな課題を抱えているかを自覚してもらうとともに、他のメンバーの状況を知る事ができます。TLクラスのToDoリストを若いメンバーが見る事で、仕事のやり方や報告の仕方がわかってきます。このToDoリストの更新が滞ってきたらプロジェクトがデスマーチ気味になっています。すぐに対処しましょう。このToDoリストから工程管理表と課題管理表を作成し、進捗管理、問題(課題)管理を行います。管理者は別途、要員管理表を作成します。また変更管理表を作成して変更管理を行います。管理表の内容は各種管理表参照。
その他リスクマネージメントも必要ですが、別の機会に論じます。
管理種別 |
作成者 |
種類 |
内容 |
適用 |
工程管理 問題(課題)管理 |
メンバー | ToDoリスト | 終業時5分または翌日の始業時5分で更新する。 | |
いつまでに | ||||
何をやるか(成果物) | ||||
実行に当たっての課題 | ||||
課題はいつまでに解決するか |
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課題は誰が解決するか | ||||
課題の解決状況 | 未実施、実行中、完了 | |||
実行状況 | 未実施、実行中、完了 | |||
管理者 | ToDoリスト | メンバーToDoリストと同様 | 昼までにメンバーのToDoリストを統合する | |
課題管理表 | ToDoリストから課題を抜き出して統合したもの | |||
工程管理表 | ToDoリストから工程を抜き出して統合したもの | |||
要員管理表 | 割り当て済み、未割り当て成果物の要員別予定、必要要員の予定 | |||
変更管理 | メンバー | 変更管理表 | いつ | |
誰が | ||||
なにを | ||||
どのように変更したか | ||||
バージョンNo(変更前) |
||||
バージョンNo(変更後) | ||||
管理者 | 変更管理表 | メンバー変更管理表を統合したもの |